自治体を取りまく環境は、少子高齢化や経済の低成長など社会経済の構造変化と分権改革 などによって大きく変化している。このような環境変化のなかで、自治体の基幹財源である
税収が伸びていない一方で、福祉、環境、まちづくりなどの分野では行政需要が増大してい る。地方分権を推進するための三位一体改革では、地方への税源委譲は難航し、国庫補助金
の削減と地方交付税の見直しは確実におこなわれている。このような収入減と支出増の圧力 のなかで、自治体はきびしい財政運営を強いられている。
だが、自治体は、国から自立した地方政府としてその地域における政策を自己決定・自己 責任のもとに展開していく責任をおっている。その政策責任の原点を確認しておきたい。
それは、自治体の仕事が地域の主権者から選挙によって選ばれた代表機関(議会・長)を 通じて、その人たちが納める税金を使っておこなわれているということである。すなわち、
地域の主権者は選挙と納税によって地域の政治・行政を地方政府である自治体に信託してい るのである。このような観点から改めて、徹底した情報公開と多様な市民参加を望みたい。
情報公開については、「情報なくして参加なし」といわれるようになって久しいが、特に 最近の環境変化のもとで財務情報と職員情報を一般市民にわかり易い形で公開・提供するこ
とである。現在でも定期的に広報紙等により財政状況や職員給与等の公表がおこなわれてい るが、これを読んだだけで、一般市民の方々にその実態や課題を理解できるだろうか。ある
いは、それ以前に役所内において職員への情報公開が十分におこなわれて、担当部署以外の 職員にも十分に理解できている状況になっているのだろうか。用語の工夫や他市との比較な
どによりわかり易い情報の提供と市民間・職員間の情報共有をはかる必要がある。
また、団塊世代の定年退職をひかえて「退職金危機」といわれているが、退職者数、退職 金額、財源などはどうなっているのだろうか。仮に行政側には不都合と思われる情報であっ
ても、税の使途にかかわる情報については市民に知る権利があるものと考えなければなるま い。
さらに、情報媒体としての広報紙とホームページを役所側からの一方的なお知らせ中心の ものになっていないだろうか。これらの情報媒体は、わが「まち」の福祉・教育・環境など
あり方を考える政策にかんする情報を提供するものでなければならない。
市民参加についてはどうだろうか。形だけのものになっていないだろうか。自治・分権型 社会における自治体政策については、政策案づくりの段階からの参加を押しすすめ、そのう
えで政策の実施過程と評価過程への参加をはかっていく必要があろう。参加メンバーについ ても、ひろく市民の参加をもとめ、特定の人や団体に偏らないようにしなければならない。
公募についても十分なPRが必要である。
このようにして、隠蔽・秘密主義、現状追認・問題先送り主義、前例踏襲主義などの古い 役所体質から決別していかなければならない。これらの体質は組織機構や仕組みを変えただ
けでは直らない。納税者である市民への情報公開と市民参加がその最強の推進力となる。 |