東京都市町村職員研修所
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加藤 悦孝 講師
仲良き友と

仲良き友と
 今年の春、武蔵村山市から東京都市町村職員研修所に派遣で勤務し、早いもので、すでに9か月が過ぎようとしています。私の専門でありました社会教育行政とは、表と裏ほどの違いがあり、戸惑いと不安の毎日でした。様々な分野の講師を招き、講座・教室を開催する立場から自らが講師として講義する立場になることなど、今までの公務員生活からは考え及ばないことでした。

 幸いにも、新しい職場においても、すばらしい先輩諸兄に恵まれ、指導や助言をいただきながら様々な学習課題に取り組む毎日です。

 また、行政に必要なもの、それは人・金・もの、現在はそれに加えて情報と時間といわれています。人を通して貴重な情報も多く得ることができます。それゆえ、人との出会いを大切にしたいと思う今日この頃です。自分の歩んできた道を振り返って見ても、趣味を通じた仲間、同じ職場の気のあった仲間、学生時代から続いている仲間など、どれをとっても私には貴重な財産です。

 そこで今回は、趣味を通じた仲間について書いてみたいと思います。趣味それは海釣りです。いつも3〜4人の仲間で行きますが、仲間の都合がつかなかった時には、単独で釣行したこともありました。行きには気も張って、眠気、疲れもなんのその。しかし、船中、帰りの車の運転には、孤独感と疲れが、特に釣果がよくなかったときには、それは顕著に表れます。毎回、同じ船、同じ曜日ですと常連とはいかないまでも顔見知りになり、いろいろ話も弾み、趣味を通じた情報もあり、楽しいこともありますが、いつも一緒の釣り仲間のようにはいきません。

 話は変わりますが、毎日の通勤でも、同じ時間、同じ目的駅ですと、いつもお会いする人が2〜3人はいるでしょう。 また、駅の向かいのホームで電車を待つ人もいつも同じ人。こんな経験は、どなたにも心当たりがあることと思います。

 仲間との釣行の日程が決まったときから、私の釣りが始まります。今の時期だと海水の温度は、当日の潮の流れはと、情報を新聞や船宿から収集します。そして、仕掛けづくりに取り掛かります。数少ない“アタリ”(魚がえさにさわること)を完璧にものにするため、多少金額がはっても、より強度のあるハリスを使用して、仕掛けを作ることに心がけています。なぜなら、せっかく苦労して釣り上げようとしても、手元でバラしては元も子もありません。海面まで寄せてきた魚はとかく大きく見えるもの。誰しも逃がした魚は大きく感じます。

 そして前の晩、翌朝の出発が早いので、早めに床につきますが、子供のころの遠足のように興奮してなかなか寝付けません。そんなときは、決まってイメージトレーニング。海底から3mハリスを上げて“コマセ”(よせえさ)を撒き、2m巻き上げてアタリを待つ。そこでアタリがないときは、竿をしゃくりあげて誘いをかけてみる。そうこうしていると、いつしか眠りに落ち、夢見ることはいつも大漁で、クーラーボックスが持ち上がらないことばかり。

・・・・そんなことは、絶対ない。現実・自然は厳しい。・・・・

 狙う魚は、早春から初夏にかけて鯛とイサキ、秋から冬には出世魚のイナダ、ワラサそして鯛、メジマグロとあまり数釣れない魚ばかりですので、“オデコ”(釣果なし)のときもありますが、大海原に釣り糸をたれ、いつくるかわからないアタリをまつときは、仕事のこと、家族のことなど全て忘れる至極の世界ですらあります。趣味には最高ですが、毎日の仕事となる漁師にはなりたくありません。趣味だから楽しい、日頃のストレスを酒で紛らわせるよりも健康的,経済的(新鮮な魚を産地直送・・・釣れればのことですが・・・)ですので、お勧めいたします。仲間とは、船上ではピクニック気分で歓談し、帰りの車中では、釣れれば分け合い、夕飯に食べる獲物の調理法で盛り上がり、逆に釣れなかったときには、今日の実釣の反省と評価を行い次回の大漁を誓い合う。

 私たちは、こんな遊びの中にも、日常の仕事と同じように、計画・実施・評価のマネージメントサイクルを、無意図的に活用していることが多々ありませんか。

 なお、次回は相模湾剣崎沖の鯛釣りの実釣編、ただし,釣れ鱈(たら)の話。
研修情報誌「こだま」第85号(平成15年11月28日発行)より掲載